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お正月くらい、家族と同じおせちを少しでも食べさせてあげたい。でも、どれなら大丈夫なんだろう。
重箱のふたを開けて、ひとつずつ見ながら考えたことはありませんか。
先に、正直にお伝えします。
ふだんムース食の方には、そのままでは向かないものがほとんどです。
やわらかく煮えた根菜も、ふわふわの伊達巻もです。やわらかい=食べられる、ではありません。
「やっぱりそうだよね」と思われたかもしれません。
でも、「なぜ食べにくいのか」が分かると、適切な対応も見えてきます。
私は管理栄養士として、病院と施設で12年、食事に関わってきました。
そして、重い障害のある11歳の娘の母です。娘は噛まずに、そのまま飲み込みます。
- 刻んでも食べられない理由が4つあること
- おせちの1品ずつ、そのどれにあてはまるか
- 家で作り直す方法
- 作らずに買うという選び方
刻めば食べられる、ではありません
飲み込みが心配なとき、まず思いつくのは「細かく刻む」だと思います。
刻めば、小さくはなります。でも、小さくなっても食べられないことがあります。
刻んでも食べられない理由が、4つあります。
この4つを知ると、おせちのどこが引っかかるのかが見えてきます。
飲み込みにくい理由は、大きく4つです
介護食の本や資料では、誤嚥(ごえん:食べものが気管に入ってしまうこと)しやすい食べものを、いくつかの種類に分けて説明しています。

おせちに当てはめて整理すると、4つになりました。
| どうなるか | どんなもの |
|---|---|
| 1 噛んでも形が残る | 硬いもの、繊維が強いもの |
| 2 のどに残りやすい | べたつくもの、パサパサしたもの |
| 3 むせやすい | サラサラした液体、酸味が強いもの |
| 4 口の中で分かれる | 汁けがあって、汁と具が別になるもの |

この4つは、おせち以外でも使えます。
「これはどのパターンだろう」と考えられるようになると、ふだんの食事でも迷わなくなります。
おせちを、4つに当てはめてみます
重箱によく入っているものを、ならべてみました。
| 料理 | どれにあてはまるか | なぜ |
|---|---|---|
| 栗きんとん | 2 のどに残る | でんぷんが多く、粘りがある |
| 黒豆 | 1 形が残る | 皮が残る |
| かまぼこ | 1 形が残る | 弾力があり、噛み切れない |
| えび | 1 形が残る | 弾力がある |
| 昆布巻き | 1 形が残る | 昆布の繊維が強い |
| 煮しめのごぼう・れんこん | 1 形が残る | 繊維が多い |
| 煮しめの里芋 | 2 のどに残る | 粘りがある |
| 伊達巻 | 2 のどに残る | パサパサして、まとまりにくい |
| 数の子 | 2 のどに残る | 粒がばらけて、まとまらない |
| 田作り | 2 のどに残る | 硬くてパサパサしている |
| なます | 3 と 4 | 酢の酸味。汁と繊維が分かれる |
| お吸いもの | 3 むせやすい | サラサラした液体 |
| 煮しめ(汁ごと) | 4 口の中で分かれる | 煮汁と具が分かれる |
刻んでも、どれも解決しません。
繊維は刻んでも残ります。粘りは刻むと強くなります。汁と具は刻んでも分かれたままです。
4つを、もう少しだけ
1 噛んでも形が残る
硬いものと、繊維が強いもの、弾力があるものです。噛んでも、形がそのまま残ります。
おせちでは、昆布巻き・かまぼこ・えび・煮しめのごぼう。黒豆も、皮が残ります。
2 のどに残りやすい
べたつくものと、パサパサしたものです。反対の性質なのに、同じ結果になります。
栗きんとんや里芋は、でんぷんが多くて粘ります。でんぷんは、細かくなるほど粘りが強くなります。
伊達巻や数の子は反対で、まとまらずにばらけます。
なめらかに見えても、のどに残ることがあります。
栗きんとんは見た目がとてもなめらかです。だから「これなら大丈夫そう」と見落とされやすいと、私は思っています。
※これは管理栄養士としての私の見方です。
3 むせやすい
サラサラした液体と、酸味が強いものです。
おせちでは、お吸いものと、なますのお酢です。
4 口の中で分かれる
口の中で、汁と具が別々になってしまうものです。
汁だけが先に流れて、具があとから来ます。煮しめを煮汁ごと食べるときや、なますがこれにあたります。
お味噌汁でむせる方がいるのも、同じ理由です。
では、どうするか|作り直すことになります
4つとも、理由が違います。でも、やることは同じになります。
ゲル化剤(ムース食の素)を入れて、ミキサーにかける。
形やまとまり方を、食べやすい状態に整えることができます。
繊維も、粘りも、パサつきも、汁と具が分かれるものも。ムース状にできます。
ただし、これで必ず食べられるようになる、ということではありません。ちょうどよい硬さやまとまり方は、その方によって違います。
ゲル化剤は、商品の説明に書かれている量と手順で使ってください。入れる量で固さが変わります。
お雑煮のムース食を手作りしました。
家族と同じお鍋から取り分けてゲル化剤を入れ、ミキサーにかけてムース状にしました。
家にあるもので作ってみたい方は、こちらです。作り方を写真で全部お見せしています▼
お餅については、別の記事にまとめています▼
でも、おせちを全部作り直すのは大変です
ここまで読んで、こう思った方もいると思います。

13品を全部ミキサーにかけるなんて無理。
私も、そう思います。
おせちを作るだけでも大変なのに、それをさらにムース状にするなんて時間がいくらあっても足りません。
全部やらなくていいと思います。
食べられそうなものを2品か3品だけ選んで、作り直す。それでも、お正月の食卓になります。
買うという選び方もあります
もうひとつ、作らないという方法もあります。
ムース食のおせちが、売られています。一式そろって届きます。
1品ずつ作り直すのがむずかしい方は、こちらを見てください。3社の値段とやわらかさをならべました▼
おせちは、注文の締め切りが早いです。
10月のうちに締め切る会社もあります。12月に入ってから探すと、間に合わないことがあります。
ふだんの食事も大変、という方へ
お正月だけの話ではないかもしれません。
毎日の食事を、全部ミキサーにかけている方もいます。
うちは、娘の体調が悪い日にミキサーを使います。それだけでも大変なので、毎日の方はどれほどかと思います。
冷凍で届くムース食は、おかずが3〜4品そろって、温めるだけです。
毎日の食事をすこしでも軽くしたい方は、こちらです。4社とも実際に食べて、値段と栄養をならべました▼
最後に
この記事は、食べものの性質をまとめたものです。
何が食べられるかは、その方によって違います。ふだん食べているものと見くらべて、心配なときは、かかりつけの先生や言語聴覚士に相談してください。
まとめ
- ふだんムース食の方に、そのまま向くものはほとんどない
- 刻めば食べられる、ではない
- 刻んでも食べられない理由は4つ。噛んでも形が残る/のどに残る/むせやすい/口の中で分かれる
- 4つとも、ミキサーとゲル化剤で手を入れられる(ただし、合う固さは人による)
- 全部やらなくていい。2品か3品だけ作り直すのでもいい

おせちのムース食があることを、私も調べるまで知りませんでした。
知らないまま、あきらめてしまう方がいるかもしれません。それがいやで、この記事を書きました。
作る、買う、やらない。どれでもいいと思っています。
知ったうえで、選んでもらえたら嬉しいです。
参考にした本:『決定版 かむ・飲み込むが難しい人のごはん』藤谷順子 監修(講談社)




